呉服の価格設定は、ますます難しい時代です。
呉服の値段とは大変難しいものです。それ故に呉服屋は如何にお客さまの大きなご信頼を頂くかが商売存立の鍵となります。一般論で云えば、価格とは品質の善し悪しで決まるものですが、呉服の場合はそう簡単ではございません。いや、簡単でないどころではなく、非常に難しい要素が何重にも重なっているのです。それを大きく別けて、第一には生産段階の問題、二つ目は流通段階の問題、3番目はお客さまに受け渡す小売り段階の問題です。そして、更にはこれらの問題を大きく取り巻く、良く云えば歴史的な伝統ある業界の、悪く云えば封建的体質の多分に残る業界の慣習からくる問題も大きな影響を持つ要素なのです。永年呉服屋をやっていても、ではお客さまに幾らでお願いしたら良いのかと云うことは常に大変難しいのです。
第一の生産段階での問題は呉服はその生産の殆どが手工業で作られており、比較的多く作られる型友禅を例にとっても、他の産品に比べれば、それこそ比較にならぬくらいの少量です。それでも型友禅にしろ、帯にしろ、同じものを数作れば、それは確実にコストは安くなります。しかし、数を多く作れば同じものが全国に出回り、消費者の不評を買うことは間違いございません。従って、高級志向のものほど、数を作らないのです。また、手描友禅などは一点、一点が手作りのため、基本的には同じものがないと云うことになりますが、今度は作家の名前で大きく値段が異なります。上は人間国宝のものから下は無名の工房で作られたものまで、いろいろなのですが、この評価も大変難しいものです。落款が入っていなくても、落款入りのものより数段優れているものは数多くありますし、落款入りでも出来ばえとすれば何だと云うものも少なくございません。下手な作家ものより、遙に優れている技術を持った職人芸の作品の方が良いと云うことです。
二つ目の流通段階での問題も価格に大きく影響いたします。この十数年の間に、実に多くの中間業者が消えてなくなりました。結果として残っている業者は、もともと経営体質が非常に強かった所なのですが、それにしても、この間の大きな消費の減退で、いまある産地問屋や卸問屋も、体力を消耗していることは間違いございません。かっては吸収できた流通間の価格変動要因が、充分吸収できなくなり、様々な問題が起こっております。
3番目の小売段階での問題は今に始まったことではございませんが、消費者、即ちお客さまに直結しているので、冒頭で申し上げたように一番難しいことでございます。詰まるところは、お客さまのご支持の有る無しで価格の評価が決まるわけですから。常に良いものを安くは基本原則ではございますが、現実にはこれが中々難しいことでなのです。お客さまがお買上げの意思決定をされるのには、幾つかの要因が複合的に重なることで決まるものと存じますが、これらを細かく申し上げると、話が大変長くなるので、このことは何れ別の機会に申し上げたいと存じます。いまは端的に日常的な問題点を申し上げるに止めます。以前にも申し上げたように呉服と云う商品は、安いからと云っても、飛ぶように売れるのかと云えば、そうではないところに難しさがございます。勿論高ければ、尚更売れません。しかし、呉服店が安く売りたいと願っても、安く売ると云うことは、薄利でと云うことになります。薄利でと云うことは、量が売れなければ商売が成り立ちません。一方お求めになるお客さまの立場からは、基本的には安くお求めになれると云うことは、何方にとってもご歓迎のはずと存じます。しかし、呉服のように難解な品は、果して本当に安いのか、品質は本当に大丈夫なのか、売れ残りの見切り品ではないのかなど見極めるのが大変だと存じます。ですから安いかなと思われても、以前からお付き合いのある呉服店が多少高くても、取り敢えず安心だからとお考えの方も少なくないはずです。現に私どもの看板商品の一つを例にとっても、(この商品は全国を隈なく調べたわけではありませんが,実質日本一安いであろうと考えております。)初めてお見えになったお客さまが、異口同音に、どうしてこんなに安いのかとびっくりされます。そして、比較的年齢の高いお客さまほど、お口には出されませんが、どうせろくなものではないとお思いの様子が判る方が多いのです。私どもとしては大変心外なのですが、心で思われることは致し方ございません。これはご自分が過去、呉服に接したご体験から、あり得ない値段とのご確信からきているものと思われます。本当に残念です。親しいお客さまからは、もっと高く売った方が売れると思うとまで云われておりますが、呉服とはこのように、安く売れば良く売れるとはいかないところに難しさがございます。また、近年、呉服の消費が著しく低迷しているお蔭で、呉服小売店の中には商品の大半を問屋からの委託商品で商いをしている向きも珍しくはなくなりました。そうなると当たり前ですが、小売価格が大幅に上昇せざるを得ません。更には立地の良い場所に出店するとか、内外装にお金をかけるとか、何れも直接的ではございませんが、余程繁盛いたしませんと間接的にお値段の上がる要因にはなります。
以上のような様々な問題の他にも呉服業界全体の問題もございます。何せ、古くからある業種故に、業界が持つ保守的な伝統、慣習が良くも悪くも根付いております。信用、若しくは相互信頼の名の下に、かなりの大きな金額の品が電話一つでも即座に右から左に動く業界なのです。過去、良い時代には、これはこれで大きな意味がある価値がございました。しかし現在のように、かってはあり得なかった未曾有不況の時代になり、産地から始まり、小売の段階までが疲弊してくると信用問題も起こり、従来は整然としていた流通経路が、本来はあってはならないことも起きてまいります。一つ二つ例を挙げれば、大会場で催すB反市とか、無料気付教室に名を借りた問屋販売と称するもの、そして、ネットオ-クションなどもこれらの範疇に入るかと存じますが、これらについてはまた別の機会に申し上げます。
これら、様々な要素を考慮しつつ最終的にはお客さまに幾らでお願いするかを決めるわけですが、本当に難しいものです。それでも私どもの店では究極、良いものを安くの商売を、これからも断固貫く決意でございます。特に、これからきものの道に入ろうかとお考えのお客さまに、少しでもお気軽に入門していただけますように、きものの文化が、これ以上に衰退をしないようにとの願を込めて、採算を無視してでも継続してまいるつもりです。賢いお客さまには、何時かは必ずご評価いただけることを信じて!
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文化庁登録第1320号の1 古代織り(本羅)手描草木ロウケツ染め 夏物正絹100%幅37.5 織師 すぎはらやすえ 染師 すずきけいこ とあります。 お二方の名前検索しても出てきません。絵羽模様で仮縫いしてありますが。お仕立ては受け賜りません、という。
本羅の帯は持っており、今気になっているのは組紐の帯(組み帯)です。いずれも高価です。今回の古代織り…は卒倒しそうな価格! どういったものか?教えてください。着崩れやデメリットは?
投稿: 大場 和子 | 2007年6月19日 (火) 11時13分